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可奈さん
第13章 思い込み
温かいおしぼりが、冷えた指先をほっとさせる。


「拓也さん、この前は……ごめんなさい」


黒髪から覗いた耳に、赤いピアスが光って見えた。


「あ、いえ。俺の方こそ……」


口紅が桜色ではなくなっていた。


「拓也、一杯飲む?」


可奈さんの向こうから、小山さんがビールをすすめてくれた。


「あ、俺バイクなんです」

「あ、そうか。残念。
可奈、例の件言っちゃえば?」

「そうだね」

「なんですか?」


2人は顔を見合わせてからこっちを向いた。


「麻由ちゃん、綺麗になったでしょ」

「え……、えぇそういえば、ちょっと雰囲気が」


無駄無く動き回っている麻由さんは、いつにも増して明るくて、頬が紅潮して見える。

そして目元には、よくわからない色気が漂っていた。


「あの、もしかして」

「そう。修平ね、上手くいったらしいわ」

「アイツもなかなかやるよな」

「マジですか、やった!」



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