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可奈さん
第13章 思い込み
「小山クンもイイ事があったのよ」

「え、なんですか?」


かつ丼を頬張っていた俺は、急いで水をひと口飲んだ。


「パパになるんだって」

「本音ですか?おめでとうございます」

「うん、ありがとう」


メガネの縁を指で軽く持ち上げ、小山さんが小さく頷く。


「じつは俺の姉貴も来年子供が産まれるんです」

「まあ、そうなの?
凄いわ、おめでた続きじゃない」

「おめでとう、うちは6月に産まれるらしいよ」

「姉貴はたしか2月とか言ってような…」


小山さんが身を乗り出してきた。


「へー、拓也のお姉さんって歳いくつ?」

「29です」

「お、うちの嫁さんと同じだ」

「パパになった小山クンて想像できないけど、赤ちゃんを抱っこしたとこ早く見たいな。──そっか、拓也さんはオジサンになるのね」


「そうなんです」


俺はふと、自分が父親になった時の姿を想像した。

親父のようになれるだろうか……

無理だな、ムリムリ。

でもその時、隣にいるのが可奈さんなら……。

あぁ早く一人前になりてー!




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