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可奈さん
第13章 思い込み
彼女は何も言わず、振り向きもせず、外から吹き込む冷たい風を残して足早に店を出た。
閉店間近で客が途絶えた店内は急に寒々としてきて、俺は人が集まった時の、室内の気温上昇について考えてみたりした。
照明はまだ明るいままなのに、店の四隅が薄暗く感じるのは、空気の流れが関係しているのだろうか。
テーブルを拭く女性の手元を無意識に眺め、マニキュアの色を変えた可奈さんの指先を思い出した。
「拓也さん、あったかいお茶どうぞ」
麻由さんの声にハッとして向き直ると、カウンターは綺麗に片付けられていて、湯気が揺らめく湯飲みが1個、目の前で待っていた。
「ありがとうございます」
熱さを我慢してゴクリと飲み込んだ。
「あいつが、可奈が自分で決めた事だ」
修平さんの声がする。
「拓也、大丈夫?」
小山さんの声がする。
「可奈は誰にも相談してなかった。俺達も今日聞いたばかりなんだ」
「相談というより報告だったな」
「そうですか。でも凄いですよね、お店が出せるなんて。支店なのかな?どこだろう。近くならいいですよね、これまで通り、またここで会えるし」
閉店間近で客が途絶えた店内は急に寒々としてきて、俺は人が集まった時の、室内の気温上昇について考えてみたりした。
照明はまだ明るいままなのに、店の四隅が薄暗く感じるのは、空気の流れが関係しているのだろうか。
テーブルを拭く女性の手元を無意識に眺め、マニキュアの色を変えた可奈さんの指先を思い出した。
「拓也さん、あったかいお茶どうぞ」
麻由さんの声にハッとして向き直ると、カウンターは綺麗に片付けられていて、湯気が揺らめく湯飲みが1個、目の前で待っていた。
「ありがとうございます」
熱さを我慢してゴクリと飲み込んだ。
「あいつが、可奈が自分で決めた事だ」
修平さんの声がする。
「拓也、大丈夫?」
小山さんの声がする。
「可奈は誰にも相談してなかった。俺達も今日聞いたばかりなんだ」
「相談というより報告だったな」
「そうですか。でも凄いですよね、お店が出せるなんて。支店なのかな?どこだろう。近くならいいですよね、これまで通り、またここで会えるし」