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可奈さん
第14章 可奈さん
男が助手席のドアを開け、傘を差しかけているのが見える。
降りてきた可奈さんの肩を抱き寄せてすっぽりと傘で隠し、ドアが閉まる音を辺りに響かせた。
同じ歩幅で動くハイヒールと革靴をバカみたいに眺めていた俺は、男の腕が彼女の腰に回された瞬間、駆け出していた。
触るな!
俺の
俺の可奈さんに
階段を駆け下り、バシャバシャと水溜まりを蹴った。つまずきながら敷地を抜け、歩道を走った。
赤信号の向こうに、マンションに入っていく2人がいる。
俺と可奈さんを引き裂くかのように、走り去る車が次々と雨の線を描いた。
くそっ!
青を待たずに飛び出し、エントンスのドアを押し開ける。
2人はいない。
インターホンで部屋番号を押そうとした時、内側の自動ドアが開いた。
……こいつだ
スーツの色も背格好も、手にしている傘も……、間違いない。
彼女を送って出てきたんだ。
「あの」
わずかに柑橘系の香りが漂ってきた。いや、ムスクの香り、ってやつかもしれない。
降りてきた可奈さんの肩を抱き寄せてすっぽりと傘で隠し、ドアが閉まる音を辺りに響かせた。
同じ歩幅で動くハイヒールと革靴をバカみたいに眺めていた俺は、男の腕が彼女の腰に回された瞬間、駆け出していた。
触るな!
俺の
俺の可奈さんに
階段を駆け下り、バシャバシャと水溜まりを蹴った。つまずきながら敷地を抜け、歩道を走った。
赤信号の向こうに、マンションに入っていく2人がいる。
俺と可奈さんを引き裂くかのように、走り去る車が次々と雨の線を描いた。
くそっ!
青を待たずに飛び出し、エントンスのドアを押し開ける。
2人はいない。
インターホンで部屋番号を押そうとした時、内側の自動ドアが開いた。
……こいつだ
スーツの色も背格好も、手にしている傘も……、間違いない。
彼女を送って出てきたんだ。
「あの」
わずかに柑橘系の香りが漂ってきた。いや、ムスクの香り、ってやつかもしれない。