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可奈さん
第14章 可奈さん
この先何度でも見せてあげられたのに。俺とならそれができたのに。

俺の背中で歌い、無邪気に笑い、この腕の中であんなに泣いたじゃないか。
この男の前で、あなたにはそれができるの?


「仕事柄、たくさんの女性を見ているけどね、不倫していた女性は、次も同じ事を繰り返す人が多いんだ。結婚適齢期と言われるもっとも美しい時期に、そんな関係を続けていた人は特にね」

「何が言いたいんですか」

「彼女もその1人だよ」

「偉そうな事を言うなよ、あなたがそうさせたんじゃないか!」

「そうかな?……彼女が自分で選んだ事だよ。もちろん、長谷川氏との事もね。誰のせいでもない」

「……でも結局、あの人は自分の妻を傷つけた」


俺は暗に、目の前の男を非難した。


「ふふ、この指輪を外さない事が、妻からの条件なんだよ。理解のある女性でね。今は仕事で海外を飛び回ってる」

「それじゃあなたの奥様も、今頃何をしているかわかりませんね」

「うむ、彼女も指輪は外していない筈だけどね」


頭が痛くなってきた。




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