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可奈さん
第14章 可奈さん
「ドライブに行ったって、さっきあの人から聞きました」

「そう。……海を見に行ったの。でも雨で、夜だしよく見えなかったの、ふふっ」

「どうして海に?」

「拓也さんと青春した場所が見たくなって」

「青春?」

「ふふっ、連れ出してくれたでしょ。どこでも連れてってあげますって」

「ええ」

「楽しかったなー」

「俺も」

「私、あの日、大切な物を思い出したわ」

「大切な物?」

「きらきらした心」

「え?」

「私が失くしたもの」

「………」

「いろいろと分不相応な物を手に入れて、それで充分幸せだと思っていたの。同じような年齢の誰かと比べて、優越感に浸ってた」

「可奈さん」

「でも、代わりに大切な物を失っていたって事に、あの時初めて気がついたの。ずるい事をすると、ちゃんとお返しがくるのね、ふふっ」


彼女は少し肩をすくめて笑った。


「でも……、やっぱり稔さんを忘れられない。
時間が解決するなんて、今の私には信じられない」




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