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可奈さん
第14章 可奈さん
「……あなたは、あなたは汚れてる」


彼女を押し退け、後退りしてその顔を見つめた。


「……、だから何度も言ってるじゃない」


彼女は肩で息をして、何かと闘っているかのように、必死に俺を睨んでいた。


「忙しいの。……早く帰って」

「可奈さん、俺の事は?……俺を、少しでも愛してくれた?」

「……いいえ、ちっとも」


涙が頬をつたう前に、俺は静かにドアを閉じた。

ドアを背に立ちすくみ、ようやく歩き出した時、言葉にならない呻き声が彼女の部屋から聞こえてきた。

それは、なかなか来ないエレベーターを待つ間中ずっと俺を苦しめ、俺の代わりに泣き叫んでいるようにも思えた。

でも、俺はもう、可奈さんを抱きしめてあげる事はできないんだ。

こんなに愛してるのに。




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