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第14章 可奈さん

雪がちらついてもおかしくない空とは対象的に、地上はｸﾘｽﾏｽ間近の賑わいで、いつもより華やいでいる。

せっかくの連休に何もする気になれなかった俺は、夕暮れになってようやく重い腰を上げた。

とぼとぼ歩き、電車に乗り、足が向いたのは"たかひら"だった。


「どうだ、 新しい仕事にはもう慣れたのか？」


いつもの席でかつ丼を食べ終わる頃、俺のｸﾞﾗｽに水を継ぎ足しながら、修平さんが隣に腰かけた。


「ええ、覚える事がたくさんあって、始めは自信喪失で落ち込んでましたけど、ようやくﾍﾟｰｽが掴めきたって感じです」

「そうか、頑張ってるんだな。お前、ちょっと痩せたんじゃないか？」

「ははっ、そんな事ないですよ」

「そうか、それならいい」


重たい手が俺の肩をﾄﾞﾝと叩き、分かってるぜと、無言の相槌をくれる。


「この前、商店会の会合があって、久しぶりに瞳さんに会ったよ」

「そうですか」

「お前、"雅"が改装したって知ってたか？」

「いいえ。この辺はめったに来なくなりましたから」


「ありがとうございましたー」


麻由さんの元気な声がする。