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可奈さん
第14章 可奈さん
カチンとグラスが合わさった。


「酷いなぁ。でもこれで、3人とも可奈さんにふられましたね」

「あぁ、ざまあみろだな。小山にも言っとくよ」

「あははは…」
「あははは…」


修平さんは、何か感づいているかもしれない。
可奈さんの嘘に、騙されたままでいるつもりなのかもしれない。

いつかまた、ここに可奈さんは来るだろうか。

その時はまた、みんなで笑って過ごせるだろうか。

俺はいつしかそんな事を思って、苦いビールを喉に落とした。




「ごちそうさまでした」


立ち上がった時、不意に携帯が震えた。


『もしもしタク?
俺だ、木田だ。
あはは、今の可笑しくね?
きダダだって、あははは…あっ、きダダダッテだって……わははは…』


やっぱアホだ。


「俺が出る前に喋りだすなよ」


久しぶりにヤツのアホ面が目に浮かぶ。


『元気そうだな、タク』

「ああ、お前は相変わらずだな、木田」

『今、飲み会やってんだ。ちょっと席を外してきた』


繁華街のざわめきが、電話の向こうに感じられる。

俺は修平さんと麻由さんに「ちょっと外に」と手で合図してから店を出た。



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