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第1章 窓辺の彼女

傾いてきた太陽が光と影をつくり、正面に見えるマンションを上下に切り分けている。


あ…


光の中にとり残されている3階のﾊﾞﾙｺﾆｰから通りを覗く彼女。

俺は今日も、人待ち顔のその人を見る為にここに来た。



いつものこの時間なら黒塗りの高級車があのﾏﾝｼｮﾝに横付けされ、ﾀﾞﾝﾃﾞｨを絵に描いたようなｽｰﾂ姿の男を降ろして走り去る。

それは毎週だったり隔週だったりの土曜日。
でもこの数ヶ月、彼女はああやって通りを覗いては、黒い車が停まるのを待っている。

俺がここにいる事も知らずに。


影に侵食されていく3階から、か細い背中がｶｰﾃﾝの向こうに隠れた。

袖無しのﾜﾝﾋﾟｰｽから覗いていた白い腕と首筋に、ﾔﾂが触れる事はもうないのだろうか。

そして彼女の家にｽﾍﾟｼｬﾙｼｰﾌｰﾄﾞを届けるという俺の唯一の楽しみも、このまま終わってしまうのだろうか。