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可奈さん
第1章 窓辺の彼女
「見る目がない女ばっかだよ、アハハ…」

「まぁ、フフ…」

「何か必要な物があったらメールして。来週また来るから」

「メールねぇ…」


俺は麦茶の礼を言って鉄の扉をゆっくり閉じた。

この団地の高さでは、7階建てのあのマンションを影で覆い尽くすことは到底できない。
それでも日は陰り、ヤツは蒸し暑さを残したままの夜を受け入れようとしていた。


……


彼女がまた通りを見下ろしている。

連絡が来ないのか、自分からは連絡できないのか。 父親のようにも見えるあの男とは、俺でもわかる訳ありの間柄。

マンションが建って3年、バイトでドアを叩いてからは2年、俺の顔ぐらいは覚えてくれただろうか。

彼女にとって俺は蚊帳の外。
美しい年上のあの人は、よくいう単なる憧れに留まっていて、健康な俺の夜の妄想は、ある地点からどうしても前に進めない。そして実際、俺にはユミがいる。

ならこの胸のもやもやはなんだ…


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