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可奈さん
第5章 来訪者
「教えてください、なんでも聞きます」


思わず立ち上がった。


「んー、でもつまんないわよ」


急須にお湯を注ぐ横顔は、俺が諦めるのを待っている。


「構いません。
じつはあの時俺、可奈さんが女の人を追いかけていくのを見てました」


静まり返った部屋は、エアコンで涼しく保たれているのに、躰中が脈を打って熱い。


「みっともない所見られちゃったか…」


湯呑みたちのぼる湯気の動きを見守る彼女。


「周りが見えなくなってた、……恥ずかしいわ」


テーブルに湯呑みを運ぶ彼女から目が離せないまま、再び向かい合って席についた。


「……たとえば…
とても大切にしていた宝物を、もう二度と目にしてはいけない、どこかに封じ込めてしまわなければならなくなった時、拓也さんならどうする?」



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