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可奈さん
第5章 来訪者
真剣な眼差しの可奈さんに、俺はゴクリと唾を呑み、真剣に答えた。


「宝物を、持って逃げます」

「っ…、あはは…」


さも可笑しそうに可奈さんは笑った。


「え、ダメですか?」


泥棒になるのか?


「ダメというより条件から外れてるわ、アハハ…」

「…そうですか」

「手元には置いておけないのよ」

「ちくしょうどうすりゃいいんだ」

「どうするの?」


可奈さんが楽しそうに身を乗り出した。


「それなら…」

「それなら?」

「…最後の見納めに、じっくり見つめたり、触ったりして、……手に入れた時からのいろんな出来事を思い出してみる、かな?」

「そのあとは?」


鈍い俺は今頃ピンときた。そしてようやく、可奈さんの事を思った。


「あとは…、見えない場所にしっかりと閉じ込めて、きれいさっぱり忘れます」




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