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可奈さん
第5章 来訪者
「きれいさっぱり?」

「はい」

「………」

「次の、宝を…探しに出掛けます」

「そう…」


彼女はまた手の中で湯呑みを動かした。

そして思い出をじっくりと見つめ直すように目を瞑り、ため息をついた。


「社長秘書をしていたの」


ずっと一人で抱えてきた秘密を誰かに話す時には、部外者で何のしがらみもない、通りすがりの誰かが最適なのかも知れない。

それが俺。

俺は可奈さんの口から語られるストーリーを、大切な宝物と言ったストーリーを、一緒に歩んでいくように聞き耳を立てた。

早く過去を閉じ込めて忘れてしまえるように、早く俺に気付いてもらえるように。
たとえ訳がわからなくても、嫉妬にかられても、全部聞かなければならない。


「最初はね、希望が叶えてもらえなくて受付け嬢だったんだけど…」


それだけで、先の読める展開だった。



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