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可奈さん
第5章 来訪者
俺は自分の小ささを確認する為に、この話を聞いているのか…。

そして可奈さんは更に俺を突き落とす。


「あんなに人を愛した事はなかった」


む、胸がぐるじい…
逃げ出したい

人の話でなぜこんなに呼吸が乱れ、脈が乱れ、気持ちが乱れるんだ。

背中と額に汗が滲む。

下心など真っ先にどこかへ逃げ出していた。


──君にはまだはやい


そ、そうですね

ん?

まだ…
まだ?

まだとは、今はまだ、と考えてもいいのか…



「お通夜の席で…」

「え…」

「もちろん元社員もたくさん来てたんだけど…」

「はい」

「数年ぶりに奥様とお会いしたの」

「………」

「丁寧にご挨拶されたわ、今までよくして頂いてありがとう、ご苦労さまって…」

「……」

「その時はよくわからなかった。社員だった時の事を言われているのかと思ってて…。でも3ヶ月経った先週、奥様が訪ねてみえたの」




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