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可奈さん
第1章 窓辺の彼女
金が貯まったら車かバイクを買って海まで飛ばしたい。ピザ屋のバイクなんてバイクじゃない。


ご機嫌ななめなユミは、明日はタクのアパートに行くからね、と言って電話を切った。

コンドームはまだ部屋にあった筈だ。

バルコニーを見下ろすと、もうあの人の姿はなくて、閉じられたカーテンからは僅かに明かりが漏れていた。


瀬川可奈…




「可奈、ピザがきたよ、私の財布を持って来てくれ」


ドアを開けたアイツは可奈さんにそう呼び掛けていた。


見るからに高そうなスーツと玄関に置かれた革靴。
大人の余裕を見せ付ける渋いおやじの傍で、可奈さんは俺からピザを受け取り「ご苦労さまでした」と柔らかく微笑んだ。

あんな短い髪ならボーイッシュに見えるはずなのに、俯いた時の長い睫毛の影と、桜色の小さな唇、首筋から肩にかけての滑らかなラインが、俺の知っている女の子達にはない色香を漂わせる。




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