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可奈さん
第1章 窓辺の彼女
むき出しの耳にはピアスも付いてなくて、それ自体が俺の目を惹くための飾りのようだった。


俺はヤツに釣り銭を渡し、奥に引っ込んでいく可奈さんの背中から足元のスリッパまでを目の端で追った。
抱き寄せたくなる腰の括れ、ワンピースの下から覗くふくらはぎと細い足首。それを素早く記憶に取り込む。


「君にはまだ早い」

「え…」


ヤツは俺を見て鼻先で笑い、更にムカつくひと言を加えた。


「今、彼女には私しか見えてないんでね」

「あ、…お、俺はべつに…」


上背では俺が勝っているのに、なぜかヤツが大きく見える。

この差はなんだ…。




「ご利用ありがとうございました、では失礼します」


ペコリと頭を下げたまま扉を閉じた。


くっそーっ。
なんてやなヤツだ。


俺は嫌味なおやじに腹を立て、見透しているようなヤツの視線にムカついた。




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