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可奈さん
第6章 風
「もっと手を緩めていいですよ、軽くで」

「あ、ごめんなさい」

「それから、カーブでは無理に躰を傾けないでくださいね、俺と一緒に傾く感じで」

「わ、わかった」


青で発進すると、可奈さんが肩の力を抜いたのがわかった。暫く黙って走る。

カーブを曲がる時も、可奈さんは俺の言い付けをちゃんと守った。


「可奈さん、今の上手です」

「ほんとー?」

「運転しやすい」

「よかったー」


時々メットが触れ合って音が鳴る。「あ、ごめん」と可奈さんが言う。

左右の景色を眺める余裕が出てきたみたいだ。


「怖くないでしょう?」

「怖くないー、楽しいー、風が気持ちいいー」

「そこがバイクのいいとこです」


街中の雑踏を抜け、国道134号線を目指す。

休日なら行く気にもならないほど渋滞するあの道も今日はすいてる筈だ。

夏休みはとうに過ぎていた。



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