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可奈さん
第6章 風
「拓也さん聞こえるー?」
「聞こえてますよー」
「高校の時ねー、彼と自転車で二人乗りした事があるの」
「へー」
「坂道でねー、彼は歩道を立ちこぎ」
「いいですねー」
「歩道が途切れて車道を渡ったら、また歩道に上がる時、少し段差があるでしょう?」
「あぁ、ありますあります」
「そこで自転車が跳ねて、私落っこちたの」
「えーっ」
「気がついたら地面に這いつくばってた」
「ま、マジですか?」
「あはは…、まじまじ、カエルだよカエル」
「じゃあやっぱり、しっかり掴まっててください」
「わかったー」
背中でクスクス笑う可奈さんは、昔を思い出しているんだろうか。それとも今が楽しいのだろうか。
どちらでもいい、たとえ昔の彼を思っていても、今、俺のそばで笑ってるんだから。
風が小さな笑い声を後ろに連れ去っていく。
「海の匂いがするー」
ルート134が近付いてきた。
湘南だ。
「聞こえてますよー」
「高校の時ねー、彼と自転車で二人乗りした事があるの」
「へー」
「坂道でねー、彼は歩道を立ちこぎ」
「いいですねー」
「歩道が途切れて車道を渡ったら、また歩道に上がる時、少し段差があるでしょう?」
「あぁ、ありますあります」
「そこで自転車が跳ねて、私落っこちたの」
「えーっ」
「気がついたら地面に這いつくばってた」
「ま、マジですか?」
「あはは…、まじまじ、カエルだよカエル」
「じゃあやっぱり、しっかり掴まっててください」
「わかったー」
背中でクスクス笑う可奈さんは、昔を思い出しているんだろうか。それとも今が楽しいのだろうか。
どちらでもいい、たとえ昔の彼を思っていても、今、俺のそばで笑ってるんだから。
風が小さな笑い声を後ろに連れ去っていく。
「海の匂いがするー」
ルート134が近付いてきた。
湘南だ。