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Could you walk on the water ?
第4章 接近
「剛君、まあそんなに興奮するな。話は最後まで聞くもんだ。会計士の君なら、それぐらい知ってるだろう」

堀内の巧妙な口ぶりに、テーブルの対面に座る大介も剛も口を閉ざした。

沙織はひとり、居間のソファに座り、静かに外を見つめている。

「いくら痛快とはいっても、俺だってあまり気持ちがいいもんじゃないさ。かつてのクラスメートが苦しんでいるのを見るのは」

矛盾めいた言葉を投げながら、堀内は大介の目を鋭く見つめた。

「だから、少しばかり援助したいと思ってね」

「堀内、あいにくだけど金なんかお前にもらうつもりは」

「大介、話は最後まで聞けって言っただろう。かつての優等生が見る影ないな」

屈辱を感じながらも、大介には堀内を憎らしげに見つめることしかできなかった。

「大介の性格を考えれば、俺の資金援助なんか断ることくらい、簡単に想像はつくさ。だから俺は別の提案をしたいんだ」

「別の提案?」

大介は、目の前の幼馴染の姿を疑念を持って見つめた。

お茶をすすりながら、堀内の視線がちらりとソファの辺りに据えられた。

表情をこわばらせる大介に笑みを与えながら、堀内は言った。

「俺のところで奥さんを働かせるつもりはないか?」

「妻を? お前のところで?」

それは大介が全く想像もしていなかった提案だった。

恐らくは、剛にとっても同じだろう。

「去年見ただろう。うちの社員寮を。トンネル工事はまだしばらく続く見込みだ。ところが、最近、寮のスタッフが何人か辞めてね。至急で人が必要なんだよ」

「堀内さん、寮のスタッフっていったい何をするんでしょうね」

少し興味を持った様子で、剛が質問した。

「住み込みがほんとはいいんだけどな。無理なら通いでいい。車もこちらで提供するよ。一番忙しい夕食どきに手伝いをしてもらえればと思ってね」

「食事の配膳とか、でしょうか」

「そうだな。雑用や掃除もお願いするかもしれない。肉体労働に近いから、奥さんにはこれまでやったことのないような仕事になるかもしれませんけどね」

堀内はそう言った後、居間のソファに座る大介の妻の姿を再び見つめた。

ブラウスにスエットパンツという、至極ラフな格好の人妻は、妙になまめかしい雰囲気を漂わせていた。

「いかがですか、奥さん」

堀内の視線が、沙織に確かに注がれる。
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