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Could you walk on the water ?
第4章 接近
「兄さん、どうするつもりだい?」

堀内が帰った後も、残された3名はそのままそこにいた。

「俺は受けるつもりはないさ」

「兄さん・・・・・・」

「沙織を労働者で溢れかえった寮の食堂で働かせるなんて、とてもじゃないができやしない。それに」

「それに?」

「堀内と俺は関わりを持ちたくないんだ。一切の関係を、ね」

兄弟が座るテーブルに、沙織は依然として近づこうとしなかった。

ただ一人ソファに座り、静かにうつむいている。

「兄さん、しかし、カフェのほうがうまく行く見込みはあるのかい」

「夏になれば観光客だって増える。必ず軌道に乗るさ」

楽観的な言葉を繰り返す兄の表情に、どこか無理が潜んでいることに、弟が気づかぬはずはなかった。

「現実から目を逸らしちゃ駄目だ、兄さん!」

「剛・・・・・・」

弟がかつて見せたことのない厳しい口調に、大介は言葉に詰まった。

「そんなに甘いもんじゃない。兄さんだってわかっているはずだ。ここ何年かは苦しいに決まってる。そんなときすがれるものがあるなら、意地を張る必要なんてない。違うかい?」

堀内は、去り際に沙織を雇用した場合の金銭条件を提示していた。

それは、想像以上に高額なものだった。

「勿論、姉さんの気持ちが一番重要だけど・・・・・」

兄への厳しい言葉を悔いるように、剛は穏やかな口調に戻り、義姉を見つめた。

妻の心の揺れを察したように、大介が声を発した。

「沙織、お前は何も気にする必要はないんだ」

「・・・・・・・」

人妻の後姿には、激しい葛藤と困惑の雰囲気が漂っていた。

しばらくの間、そこに重苦しい静寂が停滞した。

「兄さん・・・・・・」

兄の決意を再確認するかの弟の言葉を、沙織は確かに聞いているようだった。

そして、沈黙を守り続けていた沙織が、ついに口を開いた。

「あなた・・・・・、私、堀内さんのところでお世話になります・・・・・」
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