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Could you walk on the water ?
第5章 困惑
妻、沙織が堀内の下で働き始めたのは、6月上旬であった。

堀内の会社から、通勤用の車が貸与された。

月曜から金曜、午後3時から10時まで、というのが勤務時間となった。

車で大介の自宅からあのトンネル工事の現場にまで通うのに、40分程度かかる。

毎日、沙織は昼過ぎには家を出て、深夜近くに帰宅するようになった。

カフェを自分一人で切り盛りする大介にとって、沙織のそんな行動パターンは、不透明な要素も多く含むものでもあった。

「沙織、仕事の方は大丈夫なのか」

勤務開始から2週間ほど経過したころ、大介は沙織にそう聞いた。

「ええ。想像よりも随分と楽ですわ」

「どんな仕事をさせられているんだ」

「夕食の配膳とか、お皿の片づけとか、いろいろです」

「作業員は多いんだろう」

「40人か50人はいるかしら。勿論、皆さん男性の方で」

「年齢はどれぐらいなんだい」

「10代の方から50代の方まで、いろいろのようですわ」

「それで・・・・・・、堀内は・・・・・・・・・・・・・」

「おかげさまで、親切にしてもらってます。あなた、変な心配はなさらないで」

気のせいだろうか。

妻の姿が、働きに出るようになってから、どこか輝きを増すように見えてきた。

もともと、自分にはもったいないほどのルックス、肉体を備えた妻だ。

だが、そんな妻が39歳の今、かつてない魅力を披露し始めているように思える。

ただ若さに任せた美貌だけではない、どこか女として熟した雰囲気が濃厚に漂い始めているのだ。

やはり、多くの男どもに取り囲まれているからだろうか・・・・・・・

見知らぬ男たちに好奇な視線を注がれる妻。

そんな彼らに対し、いったい妻は何を感じて・・・・・

大介は、そんな思いをやがて、日中でも止めることができなくなった。

自分自身の至らなさを強く感じながら・・・・・・・・
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