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Could you walk on the water ?
第2章 都落ち
突然のリストラだった。

中堅電機メーカーに勤務していた大介は、数か月前、人事部から宣告を受けた。

所属部門の閉鎖に伴う、社員一斉整理であった。

43才の大介には、10年前に結婚した妻、沙織がいる。

今年38歳になる沙織との間に、子供はいなかった。

四国で生まれ育った大介は、地元の優等生として上京、大学に入学した。

そのまま東京本社の電機メーカーに就職、30代になった頃まで独身生活を続けたが、上司から沙織を紹介され、結婚に至った。

「おとなしい女性だが優秀な方だ。それに、抜群に美人だぞ」

上司の説明通り、沙織は知的であると同時に大変に美しい女性だった。

身長165センチと長身の彼女を見て、大介がまず目を奪われたのは、長くしなやかに伸びた彼女の両脚だった。

聞けば、バスケットボールを中学、高校と続けていたという。

スリムな肢体の持ち主であるにもかかわらず、その胸元、腰つき、そしてヒップは豊満な曲線を描いている。

地方出身の垢抜けない雰囲気をどこかで引き摺っている大介にとって、沙織は高嶺の花と言えるような女性であった。

彼女の口数の少ないところが、大介のまた気に入った部分であった。

自分よりも優秀な大学を卒業した妻の学歴も、大介には何の抵抗もなかった。

5歳下の沙織と、大介は運命に従うかのように結婚し、子供に恵まれないまでも、十分に幸せな生活を送ってきた。

その幸せな夫婦に不意に訪れたのが、夫のリストラだった。

「沙織、心配しなくていいからな。なに、仕事なんて、簡単に見つかるさ」

「あなた・・・・・、でも・・・・・」

楽観を装う夫に対し、沙織は現実的な姿勢を失うことがなかった。

結果的には、妻の観測が正しかった。

数か月奔走した大介は、結局まともな仕事を見つけることができなかったのだ。

43歳という年齢は、既に転職が困難な年齢であった。

「駄目だ・・・・・、いったいどうずれば・・・・・」

追い詰められた大介は、やがて、沙織が想像もしていなかった結論を出した。
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