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Could you walk on the water ?
第2章 都落ち
「沙織、四国に帰ろうと思うんだ」

「でも、あなた・・・・・、仕事はいったい・・・・・・・」

「大丈夫さ。自分で何か新しいことをやってみる」

「新しいことって・・・・・・」

「そうだな・・・・・、観光客相手にカフェくらい開けるかもしれないよ」

「そんなに簡単にできるものかしら・・・・・・」

視野が狭くなりつつあることに、そのときの大介は気づくことができなかった。

半ば強引にその意志を押し通し、最後には沙織を納得させた。

「そこまでおっしゃるなら・・・・、私もできる限りのことはするわ・・・・」

「すまんな、沙織・・・・・・・、数年経てば、きっと軌道に乗ると思う」

子供がいないこともあり、ある程度の貯蓄はあった。

大介自身、この都会から、自分が捨て去られたような気分になっていた。

こんな街は、こっちからごめんだ。

賃貸だったマンションの荷物を片づけるのに、それほど時間はかからなかった。

引き留める元同僚たちの声を振り払い、大介は沙織と共に故郷への道を急いだ。

山道をくねるバスの揺れが、大介にこの数か月の出来事を想起させていた。

「沙織、もうすぐだ。覚えているだろう、この辺の景色は」

「そうね・・・・。もう何年振りかしら・・・・・・・」

「おふくろの法事以来か・・・・・。5年以上になるかな・・・・・・・・」

実家には、既に両親はいない。

2世帯住宅に生まれ変わった大介の自宅に今住んでいるのは、ただ一人だった。

「そろそろだ・・・・。あれ、剛のやつ、出迎えなんかいいって言ったのに」

バス停に見えてきた一人の人影を見つけ、大介はどこか嬉しそうに表情を崩した。

表情を硬くしたまま、沙織もまた、そこで待つ男性の姿を見つめた。
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