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Could you walk on the water ?
第2章 都落ち
「兄さん、遠路はるばる疲れただろう」
弟に注がれるビールの味は、また格別だともいうように、大介は相好を崩した。
2世帯住宅に生まれ変わった実家。
そのダイニングで、大介夫婦は旅の疲れを癒すように、夕食の時間を過ごした。
大介の弟、剛が兄夫婦をもてなしていた。
「長いお勤めだったからなあ。実家のことはお前に任せ、俺は東京で20年以上」
「ほんとにこっちで暮らすつもりなのかい、兄さん?」
「そのつもりだ。もう、都会なんか絶対に帰らないさ」
「姉さんはそれでいいのかな」
大介の隣に座る沙織の姿を見つめ、剛は心配そうに言った。
白地のブラウスに控えめな色のカーデガン、そしてベージュ色のパンツルックという格好の人妻は、決して派手な服装ではないが、都会の洗練された雰囲気を濃厚に漂わせていた。
大介の弟、相本剛は今年37歳になる。
兄とは6歳離れている彼は、未だ独身を貫いている。
野暮ったさが残る兄とは異なり、涼やかなルックスを持った、好青年であった。
彼は故郷のこの町で会計事務所を開き、立派に自立して生活を送っていた。
弟の問いかけに、沙織は静かに答えた。
「私は、主人を信じてどこまでもついていくだけですわ」
剛はしばらく沙織を見つめた後、重苦しい雰囲気を溶かすように言った。
「兄さんはいい奥さんをもらったもんだなあ。うらやましい」
「そういうお前はまだなのかい、結婚」
「こんな田舎に嫁さんに来てくれる女性なんて、いまどきなかなかいないぜ」
ビールを片手に兄に答えた後、何かを思い出したように剛は続けた。
「兄さん、そういえば同級生だった堀内さんって覚えているだろう?」
「堀内・・・・・・・、堀内雄三か・・・・・・・・・・」
大介の表情に、一瞬陰が走ったことに、沙織は敏感に気づいたようだった。
弟に注がれるビールの味は、また格別だともいうように、大介は相好を崩した。
2世帯住宅に生まれ変わった実家。
そのダイニングで、大介夫婦は旅の疲れを癒すように、夕食の時間を過ごした。
大介の弟、剛が兄夫婦をもてなしていた。
「長いお勤めだったからなあ。実家のことはお前に任せ、俺は東京で20年以上」
「ほんとにこっちで暮らすつもりなのかい、兄さん?」
「そのつもりだ。もう、都会なんか絶対に帰らないさ」
「姉さんはそれでいいのかな」
大介の隣に座る沙織の姿を見つめ、剛は心配そうに言った。
白地のブラウスに控えめな色のカーデガン、そしてベージュ色のパンツルックという格好の人妻は、決して派手な服装ではないが、都会の洗練された雰囲気を濃厚に漂わせていた。
大介の弟、相本剛は今年37歳になる。
兄とは6歳離れている彼は、未だ独身を貫いている。
野暮ったさが残る兄とは異なり、涼やかなルックスを持った、好青年であった。
彼は故郷のこの町で会計事務所を開き、立派に自立して生活を送っていた。
弟の問いかけに、沙織は静かに答えた。
「私は、主人を信じてどこまでもついていくだけですわ」
剛はしばらく沙織を見つめた後、重苦しい雰囲気を溶かすように言った。
「兄さんはいい奥さんをもらったもんだなあ。うらやましい」
「そういうお前はまだなのかい、結婚」
「こんな田舎に嫁さんに来てくれる女性なんて、いまどきなかなかいないぜ」
ビールを片手に兄に答えた後、何かを思い出したように剛は続けた。
「兄さん、そういえば同級生だった堀内さんって覚えているだろう?」
「堀内・・・・・・・、堀内雄三か・・・・・・・・・・」
大介の表情に、一瞬陰が走ったことに、沙織は敏感に気づいたようだった。