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Could you walk on the water ?
第8章 浴室接待
建物は2階建てで、狭い廊下が巡る複雑な構造だった。

大浴場、それに個人風呂は共に1階にあるようだ。

大浴場の方角から、多くの労働者たちの声が聞こえてくる。

その賑わいに乗じるように、大介はじわじわと個人風呂に接近した。

何人もの作業着姿の労働者が狭い廊下を歩いている。

大介は廊下脇のかごに積まれていたタオルを手に、平静を装って歩いた。

「白石さん、こちらでお過ごしください。じきに彼女が参りますから」

堀内の声が突然至近距離から聞こえた。

大介はとっさにすぐ横の空間に飛び込んだ。

廊下とのれん状の巨大なカーテンで仕切られたそこは、かごやタオルが雑然と並んだ物置とでも形容できるスペースだった。

照明はない。

身を隠す空間としては最適である。

だが、勿論、ここからは白石の様子をうかがうことなどできない。

「どうしたら・・・・・・・」

思案にくれる大介の耳に、お湯を流す音が、想定外の鮮明さを伴って届いた。

「まさか・・・・・・」

どうやらここは、個人風呂のすぐ隣らしい。

しかも直接繋がっているような、それほどにはっきりとした音が聞こえてくる。

薄闇の中、大介は壁を慎重に観察した。

やがて、5ミリ程度の細い隙間が、縦10センチほど存在しているのを知った。

そこに目を密着させた大介は、向こう側の空間を、ぼんやりだが、確かに見た。

湯船に1人浸かる白石の、禿た頭頂部がはっきりと見える。

意外にも洗い場が広そうだ。

ここに沙織が来るというのか・・・・・・・・。

大介は息を呑んでそこを見つめた。

10分以上が経過した。

そして、夫の疑念が現実のものとなった。

「よろしいでしょうか」

人妻のガラスドア越しの声に、白石は湯船に入ったまま、低い声で答えた。

「ああ、はいりたまえ」

「失礼します・・・・・・」

ゆっくりと、ためらうようにドアが開く。

大介の視界に、黒色のビキニ水着姿となった妻の肢体がとらえられた。
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