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Could you walk on the water ?
第3章 再会
自然が多く残るこのエリアを訪れる観光客は決して少なくない。

近郊には平家の落ち武者が隠れていたという、秘境めいた集落も残っている。

大介は、そんな観光客相手にささやかなカフェを開業する計画を持っていた。

もともと、コーヒー、紅茶、ハーブティーといった飲料には造詣が深かった。

「あなた、私に何かできることがあったら、遠慮なく言ってくださいね」

沙織のそんな言葉が、大介にはありがたかった。

だが、彼には妙なプライドもあった。

妻には決して苦労をかけない。

夫として、自分が妻を養っていくのだ。

大介には、沙織を働かせる気など、さらさらなかった。

もっとも、このエリアに沙織が働けるような先はほとんどなかったのだが。

高原野菜栽培が、観光業に次ぐ唯一の産業といっていい。

農家、個人経営の小さな会社がいくつかあり、大介の弟、剛の会計事務所もそれらを客としていた。

「沙織、周辺を一緒に見て回らないか?」

帰郷からしばらくした後、大介は妻と一緒に車で故郷を巡回し始めた。

カフェのオープン候補地を探す活動でもあった。

「あなた、やっぱり空気が綺麗ね」

「そりゃそうさ。東京とは雲泥の差だろう」

季節は真夏を迎えようとしている。

妻とそんなドライブを重ねていくうちに、大介は確かな幸せを取り戻していた。

都会のストレスから解放されたのか、妻はこちらに来てその瑞々しいまでの美しさに更に磨きをかけたようであった。

ある日、大介の車は随分と山の奥深くを走った。

「そういえば・・・・・・・、こっちは川内渓谷のほうだな・・・・・・・・」

巨大なダンプカーが何台か、次々に向こうからやってくる。

大介は、少し鼓動を高めながら、車を奥に進めた。
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