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Could you walk on the water ?
第10章 罠
「お前のスタッフをレイプ? 寝ぼけたこと言ってんじゃねえぞ、大介」

再び大介と呼んだ堀内は、思案を巡らせるようにぐるぐるとゆっくり歩き始めた。

「証拠があるのかい、証拠が?」

「妻を襲った同じ豊岡のグループにやられたんだよ、昨夜、うちの店員がね」

「だったら豊岡に聞くんだな。俺のところに来てもらっても困る」

「堀内、お前、俺を徹底的にいじめようとしているだろう?」

「馬鹿な。それほど俺は暇じゃないぜ」

「妻を、そして俺の店をいじめる。昔の恨みがやっぱり忘れられないのか」

苦い記憶だった。

小学校、中学校と常に成績優秀だった大介の対極に、堀内はいた。

教師から信頼を得ていた大介は、堀内たち不良生徒を取り締まる役回りであった。

「落ちこぼれ、落ちこぼれ、と教師にはいつも言われていたぜ、俺は」

堀内は、手にしたドライバーのヘッド角を確認するように見つめながら、そんな言葉を漏らした。

「あなたみたいな落ちこぼれで不良は、社会の迷惑になるだけだ。頼むから消えてくれ、と。そんなひどいことを毎日言われた」

「・・・・・・」

「相本君を見習いなさい。彼はちゃんと将来のことを考えてるでしょう。へっ、将来のことがわかってなかったのは、どっちだっていうんだ。大介、ええっ、お前も似たようなことを演説してたんだぜ、偉そうに。忘れたとは言わせない」

堀内は再び大介から遠ざかるように歩き、窓から外を見つめた。

「お前をいじめてる、か。まあ事実かもしれねえな。だが、少し違うぜ、大介」

「何が違うんだ・・・・・・・」

「俺はな、自分が狙ったものを手に入れようとしているだけだ」

「狙ったもの・・・・・・・・・・」

「それがたとえ人の所有物でもな」

堀内は、再び壁に向かうと、ぶんと音を立てて、激しくドライバーを振った。

「妻は・・・・・・、妻は絶対に渡さない・・・・・・・・・」  

大介は、目の前の男の本音を遂に知った。
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