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Could you walk on the water ?
第10章 罠
「お前の奥さんが欲しいなんて言ってない。ものの例えだ、深く考えるなよ」

堀内は金色に光る腕時計をちらりと見つめ、大介に言った。

「大介、もういいだろう。そろそろ県庁の連中とゴルフの時間なんでね」

「白石に妻を与えたのか・・・・・・」

「白石? お前、自分が何を言っているのかわかってるのか」

「妻に白石への世話をさせたんだろう、あの寮で」

「お、お前・・・・・・・・・・・」

狼狽する堀内の様子に、大介は一気にたたみかけようとした。

「勤務させている女性スタッフに猥褻行為を強要させている。しかも相手は県の役人だ。これをマスコミがかぎつけたら、堀内、お前、どうなると思う?」

大介に背中を向けたまま、堀内は外の景色を凝視して動かない。

「堀内、どうなんだ! 全部マスコミにぶちまけてやるぜ、俺が!」

しばらくの間、堀内が微動だにしなかった。

だが、やがて彼の背中が小刻みに震えはじめたのを、大介は知った。

彼は笑っていた。

「な、何がおかしい、堀内・・・・・・・・・・・・」

「大介、お前は墓穴を掘ったな」

「墓穴?」

「マスコミに接近する前に、こっちはお前を告訴してやるさ。住居不法侵入でね」

「な、なんだと?」

「お前が寮の食堂に何度か侵入した事実は全部わかってる。山崎っていう作業員からも証言がある」

大介が狼狽する番であった。

「そして決定的な証拠をお前は今、自分で口にしたんだ。白石さんの入浴現場を覗き見しましたって、な」

「・・・・・・・・・」

「風呂の隣の物置。壁の隙間。おまえ、全て罠にはまったんだぜ」

「・・・・・・・・・」

「風呂場覗き目的の住居不法侵入か。下手したら懲役だぜ、相本大介さん」  

大介はそれ以上、言葉を続けることができなかった。
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