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Could you walk on the water ?
第11章 夫の目の前で
いつまでも炊事場で時間を費やすわけにはいかなかった。

沙織はやがて、皆の場に戻らざるを得なかった。

「奥さん、こちらへいらしてください」

白いシャツにタイトスカートというフォーマルな格好に近い人妻が、緊張を維持したまま、ソファに招かれる。

大介は相変わらず、そこから少し離れたダイニングテーブルにいる。

ソファに座った人妻の右隣に、堀内が密着するように座った。

午後9時になろうとしている。

堀内は依然としてビールを飲みながら、隣にいる人妻にささやきかける。

「奥さん、どうですか、この田舎の町は」

「自然が豊かで・・・・・・、美しい場所だと思います・・・・・・・・・・」

39歳の人妻は、雇い主である男に視線を向けることなく答えた。

「優等生の回答だな、奥さん。たまにはそんな殻を脱ぎ捨てたほうがいい」

堀内が、沙織の髪を左手で撫でながら、耳元でささやいた。

「大介、お前、奥さんを毎晩抱いてやってるんだろうな」

堀内の矛先が想定外の方角に向かったことに、大介は焦りを感じた。

「関係ないだろう、そんなことは」

「奥さん、どうなんですか。旦那には毎晩してもらってるんですか」

答えられるはずもなく、沙織は顔をうつむけ、ただ沈黙を貫いている。

「どんな男でも奥さんほどの女だったら、毎晩やりまくりますよ」

「・・・・・・・・・・・」

「奥さん、今まで大介に抱かれてイったことはあるんですか?」

その質問は、大介の胸に確かなさざ波を立てるものだった。

ソファに座ってうつむいたまま、沙織はあくまでも黙り続けている。

「奥さん、なるほど、そういうことでしたか・・・・・・・・・・」

どこか納得したように大きくうなずきながら、堀内がささやいた。

「奥さんには、いつも何かを欲しがるような雰囲気を感じていたんですが、そういうことだったんですな・・・・・」

長い間の疑問が氷解したかのように、堀内は心地よい笑みを浮かべた。
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