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Could you walk on the water ?
第11章 夫の目の前で
「奥さん、あなたはずっと欲求不満だったんでしょう。そして、まだ一度も女の悦びを知らない。違いますか?」

堀内の言葉に、沙織は遂に反応した。

「いい加減なことを言わないでください。主人の前でそんな酷いこと・・・・」

「むきになるってことは、奥さん、どういう意味なんでしょうな」

手にした缶ビールを揺らしながら、堀内はテーブルに座る大介を見つめた。

「大介、心配するな。俺たちは奥さんの全てをまだ奪ってはいないぜ」

「・・・・・・・・・・・」

「お前が知っている通り、奥さんには随分無理をしてもらったよ。俺の仕事の主役は欲求不満の男たちだからな。汗水たらして1日外で働く肉体労働者。女には目のない官僚ども。この仕事をうまくやるには、どうしても女の力が必要だ。それも、いい女の力が、な」

堀内は、自らの仕事を誇るように、大介に演説をぶった。

「この数か月、奥さんにはずいぶん助けてもらった。それなりの報酬は払っているつもりだがね。だが、お前が心配するような行為は、遂にまだ、やってもらってはいない。はっきり言うけどな、奥さんを誰にも抱かせてはいないってことだ」

「・・・・・・・・・・」

「大介、俺が何を言いたいかわかるか?」

それが理解できたとしても、大介は自分から口にするつもりはなかった。

「俺は奥さんを大切に扱ってきたってことだよ。誰あろう、俺自身のためにな」

「・・・・・・・・」

「その結果、奥さんは女としての欲求を限界にまでためこんでいる。いろんな刺激を与えられるだけで、男に最後までしてもらったことは一度もないからな。それはお前の責任でもあるぜ、大介」

「堀内、お前・・・・・・・」

「奥さん、今夜は長い間たまってきた奥さんの望みを遂に叶えてやりますよ」

口元を人妻の耳たぶに接近させながら、堀内の左手が彼女の背中にまわっていく。

「堀内さん、いけません・・・・・、困ります・・・・・・・・・」

ソファから逃げることもできず、沙織はただ身を硬くし、防御態勢を示した。

腰のくびれを掴んだ男の手が、人妻に絶対に逃がさないという意志を伝える。
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