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Could you walk on the water ?
第17章 決行
「まさか社長があの奥さんをものにするとはな」
式典に呼ばれなかった豊岡は、仲間たちと煙草をふかしながら、冷めた目で会場を見つめていた。
「驚きですよね、全く。狙っているのは間違いなかったですけど」
「よくあの旦那が離婚したものです」
野郎たちは、豊岡を囲みながら、会話を続けていった。
穏やかな春の光の中に、桜の花の匂いが入り混じっている、平穏な午前だった。
「自分が放火魔になったんだ。奥さんに申し訳ないと思ったんだろうよ」
「でも、奥さん、別れた後、すぐに社長と結婚ですからね」
「旦那が刑務所に入ったころから、肉体関係があったって噂だぜ」
「そうなんですか?」
「社長は夜はすげえらしい。そのテクに、奥さんも陥落したってとこだろう」
「豊岡さん、うらやましいんとちゃいますか?」
「うるせえなあ。まあ、それは否定しねえけど。結局抱きそびれちまった。でももう無理だな。いくら何でも、社長の奥さんに手を出すわけにはいかねえ」
「林の奥でいいところまでいったんですけどねえ」
「ああ」
式典会場の方から、皆が立ち上がる気配が伝わってくる。
「おや、そろそろ終わりかな?」
「豊岡さん、社長にはもう一仕事あるらしいですよ」
「そうか。トンネルの中で」
「ええ。セレモニーとして、トンネルのど真ん中でテープカットをしたいって、以前からおっしゃってましたからね」
「晴れの舞台ってわけか。でも、社長一人でやるってのはおかしな話だな。メディア連中を引き連れて」
「どうしても俺だけでやるって、聞かなかったらしいですけど。噂では奥様の提案だとか」
「奥さんの?」
豊岡は、何かにひっかかるように、傍らにいる仲間の男を見た。
「あなたが手掛けたプロジェクトなんだから、最後くらい、一人で目立つのもいい、そういう場を私も見てみたい、って強く推薦したらしいです」
「なるほどな。そこまでもう、社長にぞっこんか」
豊岡は煙草のけむりを肺奥にまで吸い込み、それを吐いた。
彼の表情には、どこか納得できないという気配が漂っていた。
式典に呼ばれなかった豊岡は、仲間たちと煙草をふかしながら、冷めた目で会場を見つめていた。
「驚きですよね、全く。狙っているのは間違いなかったですけど」
「よくあの旦那が離婚したものです」
野郎たちは、豊岡を囲みながら、会話を続けていった。
穏やかな春の光の中に、桜の花の匂いが入り混じっている、平穏な午前だった。
「自分が放火魔になったんだ。奥さんに申し訳ないと思ったんだろうよ」
「でも、奥さん、別れた後、すぐに社長と結婚ですからね」
「旦那が刑務所に入ったころから、肉体関係があったって噂だぜ」
「そうなんですか?」
「社長は夜はすげえらしい。そのテクに、奥さんも陥落したってとこだろう」
「豊岡さん、うらやましいんとちゃいますか?」
「うるせえなあ。まあ、それは否定しねえけど。結局抱きそびれちまった。でももう無理だな。いくら何でも、社長の奥さんに手を出すわけにはいかねえ」
「林の奥でいいところまでいったんですけどねえ」
「ああ」
式典会場の方から、皆が立ち上がる気配が伝わってくる。
「おや、そろそろ終わりかな?」
「豊岡さん、社長にはもう一仕事あるらしいですよ」
「そうか。トンネルの中で」
「ええ。セレモニーとして、トンネルのど真ん中でテープカットをしたいって、以前からおっしゃってましたからね」
「晴れの舞台ってわけか。でも、社長一人でやるってのはおかしな話だな。メディア連中を引き連れて」
「どうしても俺だけでやるって、聞かなかったらしいですけど。噂では奥様の提案だとか」
「奥さんの?」
豊岡は、何かにひっかかるように、傍らにいる仲間の男を見た。
「あなたが手掛けたプロジェクトなんだから、最後くらい、一人で目立つのもいい、そういう場を私も見てみたい、って強く推薦したらしいです」
「なるほどな。そこまでもう、社長にぞっこんか」
豊岡は煙草のけむりを肺奥にまで吸い込み、それを吐いた。
彼の表情には、どこか納得できないという気配が漂っていた。