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Could you walk on the water ?
第18章 喪服未亡人
「彼は私の雇い主でした。それもあって、離婚前からいろいろとよくしてもらっていたのは事実です」

「立ち入ったことを聞きますが、奥さん、離婚前に堀内さんと関係を持ったというのは事実でしょうか」

「どちらでお聞きになったのかしら」

鋭い視線で見つめ返す未亡人に、広瀬は少し慌てた様子で答えた。

「お気を悪くなさらないでください。どこかでそんな噂がありました。前のご主人が収監された直後から、堀内さんが度々奥様のご自宅を訪れていた、と」

「社長ですから何度かはお越しいただきましたわ。一人になった私のことを、いろいろと気にかけてくれましたから」

「そこで愛情が芽生えた、と」

緊張をはらんだ沈黙の中、沙織は年下の刑事を軽蔑するように見つめた。

「どうとらえてもらっても構いませんが」

「失礼ですが、堀内さんの何が魅力だったんでしょう」

若い刑事は、全くひるむことなく質問を続けた。

そこが今回の殺人事件の核心であると、彼が考えているのは明らかだった。

「財産でした・・・・・、という答えが欲しいのかしら」

「・・・・・」

「堀内は・・・・・、彼は私を深く愛してくれました」

「愛して・・・・」

「毎晩、とても激しく情熱的に抱いてくれました。私、そんな風に男性からされたことなど、一度もなかったんです」

「・・・・・・」

「女として生まれてきた意味を、私、堀内に教えてもらったんです」

「奥さん・・・・」

「身も心も、彼に奪われてしまったというのが、事実ですわ」

既に冷たくなったお茶を、広瀬は生唾と一緒にごくりと飲み込んだ。

言葉を発することのできない刑事に、未亡人は更に繰り返した。

「あなた、ご結婚されてるのかしら」

「い、いえ」

「覚えておいたほうがいいわ。女性は結局、いつだって満たされたいんです。強く、たくましい男に」

通夜会場。

記帳テーブルが置かれたテント内で、広瀬は昨日の未亡人の言葉を想起していた。

恐らくは、未亡人の言葉は全て真実なのだろう。

だとしたら、真犯人は誰だ・・・・・・・・。

どう考えても相本大介、そして夫人だった沙織が最有力容疑者なのだ・・・・・。

弔問客の様子を注意深く観察しつつ、広瀬は妄想を止めることができなかった。

全裸にされた未亡人が堀内雄三に挿入を許し、激しく声をあげているシーンを。
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