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Could you walk on the water ?
第18章 喪服未亡人
参列者の波は、午後10時をはるかに過ぎたころ、ようやく途絶えた。
既に両親もなく、兄弟姉妹もいない。
堀内雄三にとって、親族と呼べる存在は妻、沙織ぐらいのものだった。
工務店の社員が、今夜の全てを取り仕切っていた。
30名程度が寺に残り、通夜の片づけ、そして明日の本葬への準備を始めた。
雨は既に止み、春の夜の心地よい空気が周囲に漂っている。
本堂にある大広間を使い、沙織はねぎらいの意味をこめて、残っていた社員への慰労の食事会を催した。
「皆様、今夜は本当に助かりました。堀内もさぞ喜んでいるかと存じます。何もございませんが、さあ、どうぞ」
喪服姿のまま、各テーブルをまわってお酌をしていく未亡人に対し、社員の誰もが恐縮した。
「奥様、どうかお気遣いなさらずに」
「奥様こそお疲れでしょう。早くお休みになってください」
そんな社員たちの目には、涙が浮かんでいる。
沙織もまた、潤んだ瞳を会場内の皆に向け、ためらいながら言葉を発した。
「本当に今回のことは突然で・・・・、この先、主人の会社をいったいどうしたらいいのか・・・・・」
「奥さん、俺たちがついてますよ。きっとこの難局を乗り越えて見せますから」
「そうとも。奥さん、一緒に堀内工務店を続けていきましょう。なあ、みんな!」
皆がグラスを手に、大声でその決意を亡き社長の未亡人に宣言した。
「ありがとう・・・・・、本当にありがとうございます・・・・・、主人もきっと喜んでいますわ・・・・・」
沙織を囲むように、食事は夜更けまで続いた。
何名かの社員はそこで泊ったが、多くの社員はいったん帰宅をした。
宴席の後片付けを社員に任せ、喪服姿の沙織は1人、大広間に接する廊下に出た。
そのときだった。
「うまくやりましたね、奥さん」
沙織の背後に、今夜ここに来ることはなかった豊岡の姿があった。
バイクスーツを着た彼は、喪服姿の未亡人を闇の中に強引に連れ去った。
既に両親もなく、兄弟姉妹もいない。
堀内雄三にとって、親族と呼べる存在は妻、沙織ぐらいのものだった。
工務店の社員が、今夜の全てを取り仕切っていた。
30名程度が寺に残り、通夜の片づけ、そして明日の本葬への準備を始めた。
雨は既に止み、春の夜の心地よい空気が周囲に漂っている。
本堂にある大広間を使い、沙織はねぎらいの意味をこめて、残っていた社員への慰労の食事会を催した。
「皆様、今夜は本当に助かりました。堀内もさぞ喜んでいるかと存じます。何もございませんが、さあ、どうぞ」
喪服姿のまま、各テーブルをまわってお酌をしていく未亡人に対し、社員の誰もが恐縮した。
「奥様、どうかお気遣いなさらずに」
「奥様こそお疲れでしょう。早くお休みになってください」
そんな社員たちの目には、涙が浮かんでいる。
沙織もまた、潤んだ瞳を会場内の皆に向け、ためらいながら言葉を発した。
「本当に今回のことは突然で・・・・、この先、主人の会社をいったいどうしたらいいのか・・・・・」
「奥さん、俺たちがついてますよ。きっとこの難局を乗り越えて見せますから」
「そうとも。奥さん、一緒に堀内工務店を続けていきましょう。なあ、みんな!」
皆がグラスを手に、大声でその決意を亡き社長の未亡人に宣言した。
「ありがとう・・・・・、本当にありがとうございます・・・・・、主人もきっと喜んでいますわ・・・・・」
沙織を囲むように、食事は夜更けまで続いた。
何名かの社員はそこで泊ったが、多くの社員はいったん帰宅をした。
宴席の後片付けを社員に任せ、喪服姿の沙織は1人、大広間に接する廊下に出た。
そのときだった。
「うまくやりましたね、奥さん」
沙織の背後に、今夜ここに来ることはなかった豊岡の姿があった。
バイクスーツを着た彼は、喪服姿の未亡人を闇の中に強引に連れ去った。