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誘淫接続
第2章 第十の接続
2.第十の接続


(1)

 麻琴の服の下は、相変わらずしっとりと湿っていた。
 ほとんどの窓が開け放たれた教室には、秋の心地よい涼風が駆け抜けている。
 それでも――
 『熱い』。
 『暑い』のではない。『熱い』のだ。

 陶芸教室では、陶器を素焼きした香ばしい匂いが残る中、二十数人の受講生たちがめいめいに粘土をこね、ある受講生は長テーブルの上で手びねりで四苦八苦しながら分厚い椀を形作り、ある受講生は電動ろくろを回して両手で薄い椀の形を器用に押し出している。

 受講生たちの年齢層はバラバラだ。女性の数が多いが、男性もいる。
 会社勤めしている受講生も多く、どうしても週末に人が集中するために土曜の昼の部は一番人数が多い。麻琴は少し歩けば声を掛けられ、また少し歩けば呼び止められて、代わる代わる受講生から質問攻めにあっていた。

 この陶芸教室『アトリエタカマサ』のオーナーで、陶芸家でもある菅原貴雅は業界ではそれなりに名の知れた人物で、彼自身は別の場所にある自分の作業場で好き勝手に作品作りに没頭し、気が向けば全部で三つある都内の教室のどこかにひょっこり顔を出す。

 それぞれの教室には二人の正社員がおり、主な仕事は管理業務であって、受講生への実際の指導は数人いるアルバイト学生が担う。
 アルバイト学生はみな芸大などで陶芸を専攻していて、技術面では麻琴たち正社員よりよっぽど詳しい。
 しかし結局手が足りず、麻琴たち正社員も受講生への指導までやらされている。
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