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誘淫接続
第1章 第九の接続
 麻琴が彼と会話をするようになって二ヶ月ほど経つ。
 他にもいろんな男性とやりとりをしたが、みな、下心しかない。
 そんなことは分かり切っていたことだから、麻琴は何とも思わなかった。
 むしろ、麻琴もそういう会話を望んでいたし、楽しんでいた。

 どんな嘘をつこうが、どんな誇大妄想を語ろうが、麻琴の『日常』を壊されることは、ない。
 それが、自分というものを発散させるには都合良かった。
 ネット上だけのやりとりは、自分を隠したまま、欲望だけを無防備に差し出すことのできる虚構でありフィクションだ。

 だから、良いのだ。
 『会ってみようよ』といったたぐいの言葉で、すぐにその関係を現実でありリアルなものへ変えようとする男は邪魔でしかなく、そういう相手とはすぐに繋がりを断つ。
 仕事を、生活をおびやかしてまで自分を発散させるつもりはない。
 男には、下心はむしろ持っていて欲しいとさえ思うが、『触覚』ばかりを求めてくることが多いのにはうんざりする。

 結果残ったのが、今、麻琴を責めている男だった。
 彼だけは、虚構を現実に持っていこうとはしなかった。
 そして、女を責めることをこの上なく好む男だった。
 それが、麻琴の好奇心を、欲情をそそった。
 安心して、自分の内に抑えつけている情念を放し飼いにしてやることができた。

 > 勝手にイってないだろうな?
 > はい・・・ご主人さま

 麻琴は相手のことを本心で『ご主人様』と呼んでいるわけではない。
 そのように呼ぶと、より強く快楽に酔うことができるからだ。
 彼と会話を交わしてきた中で、麻琴は欲情を思う存分発散できるように、この虚構の関係をそのように作っていっただけだ。
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