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誘淫接続
第5章 接近
 隆一はただトイレに行こうとしているだけだろう。麻琴は隆一とすれ違った。
 「さっきより顔赤くなってる気がします、早く帰られた方が……?」
 隆一は立ち止まって麻琴にそう言った。

 麻琴は、本当の理由も知らず、純粋な目で心配そうに見てくる隆一から目をそらせた。
 まともに隆一の顔を見ることが、できない。

 「……ごめんなさい」
 麻琴はうつむき気味にそう言って教室へ行こうとした。
 突然、麻琴は振り向いて隆一に言った。
 「田村さんも……その……連れて行ったことあるんですか?」
 隆一は立ち止まったまま麻琴をきょとんと見ている。
 ――聞かなきゃ良かった……かな……
 「……どうしてそんなことを?」
 隆一が不思議そうに言った。

 隆一の反応に、麻琴は一瞬、二人が楽しそうに話をしていたのは見間違いだったのだろうか、という気になった。
 いや、確かに見た。翠だってあの日、隆一が来ていたことをはっきり認めたのだ。
 「水野さんが想像されてるような関係じゃないですよ」
 隆一はほほ笑んでそう言うとトイレへ入っていった。

 麻琴は、どことなくほっとした気持ちになった。
 ――月曜に聞けばいいじゃない……
 ――もう、立場なんてどうでもいい……!
 ――それより……
 そんな資格あるだろうか?
 下腹の中にあるバイブを二穴がキュッと締め付ける。
 ――やっぱりこんないやらしい私には……
 麻琴は頭を横に二、三回振った。
 ――今は、考えないでいよう……

    ※  ※  ※

 麻琴は教室に入ると、まっすぐ事務室へと向かおうとした。
 その途中、素焼きしたいくつかの湯飲みに、しゃがんで釉薬をかけている松戸の姿があった。
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