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誘淫接続
第5章 接近
 松戸は湯飲みをひっくり返し、底の高台を持って手際よくプラバケツの中の液体にどっぷり浸け、引き上げた。
 脂ぎったねちっこい顔と口調とは裏腹に、松戸の手先は器用で、陶芸に関してはそこそこの腕前であることは麻琴も認めていた。

 麻琴は松戸のそばを通り過ぎようとした時、声を掛けられた。
 「水野さん、釉薬のウマい掛け方教えてくれないかなあ? おっと……今さら何言ってんだなんて顔しないでくださいよお、何事も常に基本に立ち返ることは大事でしょお?」
 そのしらじらしい物言いに、麻琴は内心むっとしたが、顔には出さなかった。
 「松戸さん、十分上手じゃありませんか」
 「僕はねぇ、あんたの掛け方が好きなんだよお……たまには見せてくんないかなあ? 講師なんだからぁ……」

 麻琴は、早くポケットの紙片を事務室のロッカーにある自分のバッグにしまいたかったが、静かに松戸の隣にしゃがんだ。
 ニ穴に収まっているバイブがずれて、それぞれが子宮近くを小さく突く。
 一晩中たかぶりを抑え続けられた身体には、ちょっとした刺激も大きな甘いしびれに感じてしまう。
 麻琴は咳をして声が漏れるのをごまかした。

 松戸は、顔を寄せてきてじっと麻琴を見ている。
 『離れてください』という言葉が喉まで出かかったが、麻琴はそれを飲み込んだ。
 「水野さん」
 松戸はまだ釉薬を掛けていない湯飲みを麻琴に差し出した。

 麻琴がそれをつかむと、松戸は続けてささやくように言った。
 「……あんた、何かしてんだろ……?」
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