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誘淫接続
第5章 接近
 「だ、大丈夫ですか……?」
 翠が半開きの目で麻琴の顔を覗き込む。
 「大丈夫……大丈夫だから」
 ――動くわけない……
 ――絶対気のせい……

 今の麻琴のスマホには、貞操帯を遠隔操作するアプリそのものが入っていない。
 淫具が動くはずがないのだ。
 昨晩からの我慢で、麻琴の身体が錯覚を起こしたのだろうか。
 麻琴は身体を動かさずにしばらくじっとしていたが、やはりニ穴のバイブは動いていない。
 身体がもう限界を迎えているのかも知れない。

 ――何か言い訳して早引きさせてもらおう……
 ――じゃないと……
 ――このままじゃここでどうにかなっちゃう……

 菅原はまだ松戸の湯飲みをほめている。
 「いや、あなた才能ありますよ、ひとつ見れば分かります、きっと他のも良い作品を作られてるはずだ……コンクールなんかに出せば間違いなく賞が取れる人ですよあなたは!」
 「今の僕はこれが生きがいですからねえ、先生にそう言ってもらえると自信つくなあ」
 松戸はただでもにやけている顔をさらににやけさせて、釉薬掛けを続けた。

 菅原は立ち上がり、歩き出した。
 麻琴は菅原に声を掛けようと、その後ろを付いて行った。
 「あの……先生……」
 麻琴がそう言った時、菅原は教室の端の棚に並べてある、焼成済みで完成した作品を見ながら声を出した。
 「水野くん、ここに並んでるのはあまり出来は良くないですねえ……」

 そういうことを声に出すのは受講生がいない所でやって欲しいものだが、今の麻琴にはそんなことを気にしている余裕はなかった。
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