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誘淫接続
第5章 接近
 「ほら、これなんか最悪ですよ……基本からやり直した方がいいな」
 麻琴は菅原がそう言いながら指さした器を手にした。底を見ると四角で囲った『松』の字が彫ってある。松戸の作品だ。
 松戸の作品の評価などどうでもいい。それよりも、早退のことを早く言い出したかった。

 菅原は突然受講生たちの方を向いて、大声で言った。
 「今から私が電動ろくろで実演しますんで、見たい方集まってください!」
 いきなりこういうことを言い出すのは、いつものことだ。
 おかげで麻琴が言いたいことを言えない状況になってしまった。

 ――やっぱり我慢しようか……
 ――私が自分でバカなことやってるだけなんだから……
 ――そんなことで仕事放り出すなんて……

 菅原は壁際に何台か並べてある電動ろくろの中で、一番近くにあるものを選んで椅子に腰掛け、両腕を前に伸ばし準備に入る。
 受講生の全員が手を止め、『陶芸作家』の手際を見ようと菅原の周りに集まってきた。
 松戸と隆一もその集まりに加わる。

 ろくろの上では大きな粘土の塊が、コーンを逆さにしたような高い山を作っている。
 翠が駆け寄り、軽くペダルを押してろくろの動作確認をした。
 ふと麻琴は、そばに水を入れたバケツがないことに気づいた。
 手と粘土を濡らす水がなければ、器を形作ることはできない。
 周りを見回すと、少し離れた場所に水が入ったバケツが置いてある。
 麻琴はバケツの前まで行き、その取っ手をつかんで持ち上げ、菅原のそばまで運んだ。

 突然――
 麻琴の腹の中にある責め具が激しく振動した。
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