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誘淫接続
第6章 強制接続
(2)
麻琴は、ビルの間を走る月曜の夕暮れの電車内で、扉の端にもたれて立っていた。
車内は満員とはいかないまでも、そこそこ混んでいる。
陽の短さが冬の到来を感じさせる。まだ十六時半くらいなのに、空は薄暗くなりつつある。
麻琴の服装は、いつものように全体が地味なモノトーンだ。小さめのバッグを手に提げ、カットソーにカーディガン、ひざ丈のスカートにブーツ、そしてロングコートをはおっている。
まだロングコートを着るにはやや早い感じではあるが、麻琴は迷わずそれを選んだ。
できるだけ、丈の長いコートで少しでも体を隠したかった。
翠に指示されて、スカートを履き、ショーツなし、タイツもストッキングもなしで貞操帯を装着させられたからだ。
素足で履くブーツの、足先に直接まとわりついてくる感触が気持ち悪い。
本当は、翠の言うことを聞きたくなどない。
しかし、まともな人間とは思えない翠の指示に逆らう勇気が持てなかった。
今は淫具は動いていないが、翠が麻琴の身体を責めようとしていることには違いない。
しかも翠は待ち合わせ場所をJR新宿駅東口改札付近、時間は十七時を指定してきた。
隆一のメールにあった指定とほぼ同じだ。場所が地下なのか地上なのかの違いだけだ。
偶然とは思えない。
翠はおそらく、隆一からの誘いのことを知っている――。
人を疑うことを知らなさそうな隆一が、やはり何も考えず翠に話してしまっていたのだろうか?
麻琴は結局、隆一にメールを返信することはなかった。
『ご都合悪ければ連絡ください』と言ってきたのを放置したのだから、隆一は今も麻琴が待ち合わせに来ると思っているかも知れない。