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誘淫接続
第7章 解除
7.解除


(1)

 さん……
 ずのさん……
 みずのさん……

 誰かが、麻琴に呼びかけている気がする。
 「水野さん、水野さん」
 急に麻琴の視界が開けた。目の前には隆一の顔があった。

 ――どうして……
 ――ここに……?

 ――そっか……
 隆一に誘いを断るメールを出していなかったからか。
 しかし今はそんなことはどうでもよかった。麻琴の意識はまだもうろうとしているが、大海原で一人遭難している所を救助されたような気分だった。

 この人は僕の知り合いです、介抱しますから大丈夫です――群がる人々に向かって、隆一がそんな感じのことを言っているのが聞こえる。
 人だかりは散らばっていった。

 スーツ姿の隆一は麻琴のバッグを持った。そして麻琴の腕を彼の肩に回し、支えるようにして立ち上がった。
 こんな風に支えられるのはもう何度目だろう。

 「とりあえず、休める場所に」
 隆一はそう言うと、麻琴を支えながらゆっくり歩き出した。
 孤独に追い詰められ続ける状況からは解放され、麻琴の中に安堵の気持ちが芽生えたものの、貞操帯の責め具を止められないことに変わりはない。

 このまま隆一と一緒にいるのは、辛い。
 嘘でもついて隆一と別れて帰りたいが、一人でまともに歩けるとも思えない。
 そんな葛藤をよそに、隆一は麻琴を連れて改札を抜け、地下から階段を上り、地上ロータリーの前に出た。
 まだ少ししか移動していないのに、麻琴はかなりの距離を歩いたような気がした。

 隆一は麻琴をどこに連れて行くつもりだろうか?
 聞けば済む話だが、隆一は黙々と麻琴を支えて歩き続けた。
 なんとなく、声を掛けづらい。
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