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翻弄の果てに
第21章 混じり合う喜びと悲しみ
予定日より2週間ほど早く陣痛がきた。

初産は時間がかかると思われた。


悠太の家に集合していた面々は、未来の出産に沸き立った。
女性陣が残り、後片付けをし、祥子をサポートした。
男性陣は、病院へ行くと言い張った悠太をなだめ、場所を変えて飲み直して欲しいという祥子の意を汲み、悠太を連れ出してくれた。

今も昔も、男という生き物は、出産の場では足手まといだ。

唯一、父である力だけは病院へ同行した。
この身体では立ち合いは難しいが、部屋から分娩室へ向かうまでの8時間、ずっと未来を支えた。


『んーっ、痛ーい!んーっ、んーっ……』

『もう少しだよ、未来。頑張れ、頑張れ。』

一生懸命腰を摩る力も汗だくだった。

かいがいしく水を飲ませたり、汗を拭いたり、陣痛が治まっている間は、髪を撫で、優しい笑顔で未来を励ましていた。

『力さん…名前…』

『うん。俺に付けて欲しいと言っていたからね、一生懸命考えたよ。』

『なんて?』

『あ・ゆ・む』

『あゆむ?』

『歩くとかいて、男の子ならあゆむ、女の子ならあゆみ。だめ?』

『ううん、素敵。いい名前だわ。ママ、どう?』

『そうね、素敵ね。いいと思うわ。』



一段と厳しい陣痛が来て、いよいよ分娩室へと未来は入っていった。

『力…さん…、一番に抱いてね、赤ちゃん。』

『もちろんだよ、未来、頑張れ!』




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