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翻弄の果てに
第22章 翻弄の果てに
祥子は何処へ向かっているのか解らないまでも、悠太と環が暮らした土地を目指していることだけは理解していた。

『道中は長いから、途中で宿を探そうな。』

『はい。』

北の方向に車はひた走る。
この先のまだ見ぬ所に悠太と環の人生の歴史があるのだ。きっと、悠太にとって、もしかしたら人生の中で最も色濃く充実した至福の時。

祥子は思った。
私が踏み入っていい所なのだろうか…


『祥子、君に会う前の俺と環の生き様だよ。君の中で、きっとずっと聞けずにいたであろう俺達の歴史。今、やっと静かな気持ちで話してあげられる。』

『いいの?踏み込まない方がいいことではないの?』

『いいのさ。俺の歴史を祥子に明らかにしたいんだ。いや、明らかにしてどうなるものではないのは解ってる。ともすれば祥子を傷つけてしまうのかもしれない…祥子、俺のわがままに付き合ってくれないか?』

『あなたが望むなら。』

『うん、ありがとう。』


日没が近づいている。
宿を見つけ、中に入った。



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