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翻弄の果てに
第22章 翻弄の果てに
『御夫婦で旅行ですか?鄙びた温泉宿ですから、のんびりなさってくださいね。』

『ありがとうございます。』

『1時間ほどしましたら、お食事でございます。大広間と、部屋食、どちらに?』

『じゃあ、部屋食でお願いします。』

『わかりました。では、ごゆっくり。』


『風呂に行こう。』

『はい。』


山の中の温泉は緑に囲まれ、落ち着いた雰囲気で、回顧の旅には最適の宿だった。

祥子は、そんな中で、環との旅行を思い出していた。

二人はそれぞれに回顧の旅で何かを模索していた。


浴衣に着替え、窓から外の景色に目をやる。部屋から見える緑は、日没と共に深い緑色に映る。

『昔懐かしい雰囲気ね。』

『そうだな。落ち着くなあ。俺達は忙し過ぎたのかな?』

『生き急いだ人生だったのかもしれないわね。』



『失礼いたします。お食事をお持ちしました。』


特別豪華でもなく、特別突飛な味でもない。自然な味わいの胃に優しい食事に一番の御馳走は、おいしい沢の水と空気。


『忘れていた懐かしさが、ここにはたくさんあって、この宿にして良かったわね。』

『うん。俺も同じことを言おうと思っていたよ。』




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