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甘やかな縄
第1章 知ってしまった
 保育園への道々、美由紀は携帯の受信ランプが点滅していないか、信号待ちのたびに携帯を見ている自分に、


(やだ、なにやってんの。私、どうかしてる。)


 そうは思いながら、やはり気にして、なぜか心が躍っている自分自身を美由紀は、面白がっていた。
 保育園に車を止め、ドアノブに手をかけた瞬間。
 受信ランプが点滅をはじめた。


(えっ、今!どうしよう?けど、子供が先、でも、、)


 心を残しながら、車を降り園舎へと向かった。


「お母さんが迎えにいらしたわよ、香織ちゃん。明日も元気で、いらっしゃい。」


「うん、先生。明日ねぇ。」


 香織の手を引き、


「先生、ありがとうございます。お世話になりました。」


 母娘揃って手を振り保育園を後にした。


「ママ、今日、パパは帰ってくるの?昨日も、いなかったし、お仕事なのかなぁ?」


 香織がくるくるした目で美由紀を見つめながら、疑問を口にした。


「う〜ん、パパねぇ、最近お仕事忙しいんだって。今日は遅いから、香織はいい娘にしてなさいって。明日の朝はパパに会えるわよ。帰りましょ。」


 幼い香織も、家に帰ってこない父親のことを気にしていた。
 ここ一ヶ月近く夫の和樹は、接待や出張と夜は午前様、一週間に家にいるのは三日ほどになっていた。
 家に着くと、香織は鍵を持って走って中に入った。
 美由紀は娘が転ばないか気にしながら家に入った。
 娘に手と顔を洗わせ、ゆっくりとおやつを一緒に楽しんだ。
 いつもの通り、ソファーの上で香織が遅めのお昼寝をはじめた。
 眠ったのを確かめると美由紀はメール開いた。


「今夜は旦那がいるのかな?
まっ、明日の夕方、食事をしてからだね。
それと、明日は泊まれるのかな?
だめなら、構わないけど。」


(やだ、泊まり?考えてなかったわ。どうしよう、子供も預けなきゃいけないし。)


「えっ泊まり、ですか?
子供を預けられたら、大丈夫なんですけど。
はっきり、わかったら、メールしますね。」


(これじゃ、まってるみたい。そこまで考えてなかった。)


 美由紀は自分のうかつさに唇を噛んだが、そのまま送信した。
 返信を待たずに、夕食の支度をはじめると、携帯の着メロが鳴った。


「俺や、やっぱり今夜は帰れそうにないわ。悪い。」


 夫はそれだけ言うと、プツッと切った。
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