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short story
第10章 遥斗の長い長い一日 /haruto
子育て支援、恐るべし・・・
こんな事ならお袋に頼めば良かった。


子育て支援が終わるまで俺は静かに息を潜めていた。
そして終わった途端、逃げるように園を出た。



「今日は怖かったな、いちか」


こんな事ってあるのだろうか・・・
自転車を漕ぎながらため息続きだ。


「・・・よし、いちか!今日は頑張ったからパパがオモチャ買ってやるぞ!」


無駄に買うとみなみに叱られるけど今日は特別だ。
あんなひどい目に遭ったんだ!
オモチャくらい買ってやっても許されるだろう。


そのまま自転車でオモチャの大型店に足を向けた。


オモチャ屋は平日でも賑やかだった。
そこで色んなオモチャをみてまわっていると、いちかはリアルお世話人形ペペちゃんに足を止める。


「ペペちゃん欲しいのか?」


「ペペちゃん・・・かーいー」


「!」


「かーいー」


・・・聞きましたか皆さん。
うちのいちかが今、ぺペちゃんを「可愛い」と言いました・・・
まだ一歳なんですよ?うちの娘・・・


赤ちゃん人形に釘付けのいちかの母性本能に俺は驚愕していた。


何なんだ・・・この海よりも深い慈愛の心は・・・!
この子は現代に降り立った聖母マリアなんじゃないだろうか。
この子が世界を救うんじゃないだろうか・・・!!





「ママーっ!!ペペちゃんあったよー!」


その時いちかより少し大きい子が力一杯母親を呼ぶ。


「ウチにあるでしょ!」


「アレはティナの!リナも欲しいのー!!」


その子はいちかの隣で地団駄を踏み始めた。
ちょっと・・・危ない!
いちかはポカンとお姉ちゃんを見上げている。


「ワガママ言うんじゃないの!」


「ワガママじゃないもん!リナ我慢ばっかじゃん!!」


「あるんだからいいんだよ!」


「リナだって欲しいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」



キーッ!!とその子が癇癪を起こしてお母さんがポカンと殴る。


「ウルサイよっ!!」


「ぎゃあああああああ!!!!」



もう収集不能な状態に他人事ながらハラハラした。
メイクバッチリでふくよかなお母さんは、凄い貫禄で子どもを見ている。



「いちか・・・いちか」


危ないからこっちに来なさい!
そんな思いを込めいちかを呼ぶ。




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