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short story
第11章 遥斗先輩とみなみちゃん 前編/ haruto
「ヤベー・・・」


あの日、みなみちゃんに駅で殴られたトラウマが・・・
あれは完全に俺が悪かったけど、また軽々しく手を出したら何かが起きるんじゃないかって・・・


「?」


「何でもない・・・何でも・・・それよりみなみちゃん俺のこと好きなんじゃん」


「!」


「・・・付き合ってよ」



眉を下げて覗き込んでもみなみちゃんは無言のままだ。
花火が終わり、祭りの後の静けさが二人を包む。


みなみちゃんがその口を開いたのはしばらく経ってのことだった。



「・・・浮気とかみなみは絶対許せないと思うんです」


「うん」


「それに多分すごく面倒くさいです、私」


「・・・うん」


「しょっちゅう会いたいって思うだろうし好きって言ってほしいと思うしそれに・・・それから・・・」


テンパってるのかみなみちゃんは一生懸命喋ってる。
その姿が可愛いなんて思っていた。


「俺だって会いたいって思うし好きだって言って欲しいならいくらでも言うよ」


「・・・・・・・・・」


「好きだよみなみちゃん」


目を見て言ったらみなみちゃんは再び俯いた。


「どうしよう・・・」


「本当に好きだよ・・・もし今信じられないなら俺、みなみちゃんが信じてくれるまで待つから」


「・・・・・・・・・」


コツンとみなみちゃんが俺の胸に額を預けた。


「待たれたら・・・そしたら今度はみなみが待てなくなるかも」


その意味に期待をしかけて、でも相手はみなみちゃんなんだとその期待を無理やり消したその時だった。


「好き・・・私も・・・」


囁くような小さな声でみなみちゃんが言った。
空耳だろうか・・・頭が働かない・・・
いざ「好きだ」と言われたら、信じられない気持ちでいっぱいだ。


でも・・・


恐る恐る腕を伸ばしてみなみちゃんを抱きしめた。
力いっぱい抱きしめたいのに大事過ぎて力任せにできなくて、表面だけに力を込めて優しくそっと抱きしめる。


腕の中にみなみちゃんがいることが信じられなかった。
でも夢じゃない。
みなみちゃんの柔らかさや匂いに浸っていると、怖々みなみちゃんの腕も伸びて背中に回る。


Tシャツを掴みキュッとみなみちゃんも抱きついて。
その仕草が可愛過ぎて胸が震えた。
こんなに誰かを愛しいと思ったことなんてなかった。





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