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short story
第12章 遥斗先輩とみなみちゃん 中編 / haruto
「あ、トオル兄さん」


“兄さん”なんてこのいかつさには似合わない呼び方で彼女は呼んだ。
この子兄さんなんだろうか。


「彼氏ができたのか」


「違うよ、この人は・・・」


と言いかけて慌てて口をつぐむ。


「が、学校の先輩」


デカくていかつい男がギロッと俺を見る。
それからジロジロ見て彼女を呼んだ。


「清花・・・いいか、大和撫子たるものは・・・」


「もう・・・本当にそういうんじゃないんだって!そうそう、これからみなみのとこ行くんだ」


「そうか」


“みなみ”と聞いてそいつの表情がホワっと緩む。
この子の兄貴ならみなみのことも知ってるのだろうか。
まさかコイツもみなみのこと・・・


「じゃあ先輩、また学校で」


「あ・・・うん」


そいつとみなみの友達は二回りも三回り大きさが違う。
奇っ怪な後ろ姿が珍妙で、見えなくなるまで見てしまった。

「本当に兄妹かよ」


皮肉めいた鼻笑いまで浮かべて。







その夜、みなみからLINEが来た。
熱は大分下がったがまだ平熱まではいかないらしい。



『先輩にも移らなかった?』


『平気だよ』


『良かった・・・熱が出る前の日いっぱいキスしたから先輩にも移っちゃってたらどうしようって心配だったの』




「・・・・・・・・・」



いっぱいキスしたからとか・・・
ヤベー・・・マジで可愛いぜみなみ!
感動して指を震わせながら返事を打ち込んだ。




『それくらいじゃ風邪なんてひかないけど良くなるまでキスはお預けだな』


『早く治すね』



泣いてる絵文字が可哀想で、俺まで泣きたくなってくる。




「早く治すねとか・・・どんだけ俺とキスしたいんだよ」


ヤバい・・・俺マジでみなみが好きだ。
付き合い始めてもっともっと好きになるなんて、こんなこと初めてで。
たまらないくらい好きで好きで・・・こんな気持ちが愛しいというのだろう。



『治ったらまたいっぱいキスしような』


その返事には照れてるウサギのスタンプが。


『受験も頑張るから、そしたら約束』



冗談めかして打ってみると既読になってしばし、OKのスタンプが帰って来た。喜びと感激で震えた。



「・・・絶対合格!!!!」



大事な約束に闘士を燃やし、即座に机に向かい凄い集中力で勉強する。



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