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short story
第13章 遥斗先輩とみなみちゃん 後編 / haruto
女の細い指がパンツ越しとはいえ俺を愛でる。


「・・・・・・・・・」


「感じてるんだ」


日和さんは愉しそうで、俺は本能に半分飲み込まれかけていた。
据え膳食わぬは男の恥という言葉を昔、先輩に教わった。
以来俺はこのような場面に遭遇すると、その教えをキッチリ守って生きてきた。


だから昔の俺なら間違いなく日和さんを押し倒し返してその唇を奪ったろう。
貪るように熱く深く・・・
彼女が居ようがどうだろうが、性欲を一時の愛情に変えてその場その場で目の前の女を愛することができたはずだ。


後の事は後で考えればいいと、どうにでもなればいいと、何より今の快楽を優先しただろう。
目の前の唇に生唾を飲んだ。


でも・・・


ふいに浮かんだみなみが悲しそうな顔をしている。
もしみなみを裏切ったらみなみの気持ちは俺のものじゃなくなるだろう。
俺は本当に大切な人を見つけたのに、そのみなみを裏切ってまでするセックスにどれだけの価値があるのだろうか。


―――その時、手に持っていたスマホが独特のバイブレーションで伝える。
この震え方はLINEで、こんな時間にメッセージを送ってくるのはただ一人、みなみだ・・・


夜更かしするタイプじゃないのにこんな時間に起きてるなんて、余程俺が心配なのだろう。
みなみを心配させてる一方で、今のこの状況と自分自身を冷静に見つめた。


「・・・帰ります」


「シないの?」


「しません、もう彼女だけって決めたから・・・」


俺のテンションに日和さんはつまらなそうに起き上がる。


「その気になっちゃったのどうしてくれんのよ」


「すみません、誰か手軽な人呼んでください」


「新規開拓したい気分なんだけど」


「俺じゃない人見つけてください」


「今ヤりたいのに今すぐご新規なんて見つかるはずないでしょ」


「じゃあ我慢してください」


日和さんは不機嫌なまま背中を向けた。
俺はそのまますぐ部屋を出た。


春先なのに外はまだ肌寒い。


全部が全部胸を張れる事じゃないが、据え膳を食わなかったのなんて初めてかもしれない・・・
本能に勝ったのも初めてかもしれない・・・


夜道を歩きながらみなみに返事を送った。
メッセージはすぐ既読になり、折り返すように電話が掛かって来た。



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